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特色ある県内企業情報

株式会社本陣平野屋

2016年4月26日

1、あゆみ~お客様目線を中心に動いてきた仕事

 私たちは、もともとは飲食業でした。曾祖母は、お惣菜を売りながらそこでアリス食堂食べることもできる(高山では「煮売り屋」といいます)ようなお店をやっていました。近郊の農家から高山に用事に来る人(お米を売りに来る人など)は、ごはんだけを持って出てきます。その人たちが帰りがけにおかずを買ってちょっと座って食べたり、用事が終わった人は一杯飲んで帰ったり、曾祖母のお店はそんな方々をもてなす小さなお店でした。その後、祖父が「アリス食堂」という洋食屋さんをはじめ、父が料理屋として宴会場なども手掛け、代々飲食関係を続けてきました。
 

旧平野屋外観

 旅館としては後発で、41年前にもともとあった「平野屋」さんという旅館の後を継がせていただき始めました。そのため、代々やってきた旅館ではなく飲食店としてのノウハウを基に旅館業を続けてきて、今ようやく旅館業が母体となりつつあるところです。またご縁もあって、もともとあった「アリス食堂」をはじめ、酒蔵とウェディングホールも手掛けております。サービスを提供するお仕事、まさにお客様目線を中心に動いている仕事に携わっています。

2、「飛騨高山を代表して、お客様に接しているんだよ。」~元気と笑顔のめぐり合わせ

 社員がすごく元気に働いて、そしてお客様が笑顔で帰っていただけるということ、そんな「めぐり合わせ」が大切だと思っています。
 「私たちは飛騨高山を代表して、お客様に接しているんだよ。」と社員によく言います。旅行は大変お金がかかるものです。その中でも旅館に泊まるお金というのは高額で、それを1泊2食で全部使い果たし、「もの」としては何も残りません。だからこそお客様に残るのは「いい思い出」でなければなりません。何万円ものお金を一夜で使ってしまうお客様にとっては、私たちの待遇ひとつが、旅館だけでなく「高山」の評価にすべてつながってしまうものです。それは酒蔵・ウェディングホール・食堂も同じで、そこには「高山代表」として背負っているものがある、ということを社員に忘れないでほしいと思っています。何か判断に迷った時は、自分がお客様だったらどうして欲しいか、お客様が自分のおじいちゃんおばあちゃんだったらどうしてあげたいか、と全て自分に置き換えて考えるようにと社員にもよく伝えています。それをわかってくれる社員が、この会社にはたくさんいます。
料理イメージ そのような思いがお客様に通じたと実感できる時は日頃から多々あります。それは、お客様がリピーターさんとして帰ってきてくださった時や、ご意見書やアンケートなどでお褒めの言葉をいただいた時などです。もちろんお叱りの言葉をいただくこともありますが、社員は私に100万回褒められるより、お客様に1回褒められる方が嬉しいものです。特にリピーターさんに関しては心を配っています。たとえば前回お越しになった時の記録を見て、お刺身が苦手で外していたお客様には、「お刺身お嫌いでしたよね、今回も外してございますよ。」とお声掛けいたします。そういった、お客様の事をよく存じ上げておりますという気持ちを表して、それがお客様に伝わった時の社員たちは本当に嬉しそうです。
 逆に、難しい点もございます。十人十色とはよく言いますが、今の旅館業は一人十色だと思っています。たとえば、会社の旅行で望まれることは、宴会場があって、二次会のためのカラオケもあって、さらに宴会にまわしの上手なスタッフがいることが挙げられます。友達との旅行では、皆でおしゃべりするのが楽しいから、広い部屋で一緒に寝たいというご希望が考えられます。そして家族旅行では、お父さんが支払ってくれるなら高級でお料理の美味しい旅館がいいと思う方もいらっしゃるかもしれません。さらにカップルでの旅行では、貸し切りの露天風呂があることがポイントになったり、お客様係との会話が時には邪魔になったりすることもあります。同じお客様でも、誰と訪れるか等のそれぞれのケースによって、選ぶ旅館や求めるおもてなしは様々です。私たちには、それを見極める力や察する力がとても必要で、これが非常に難しいのです。558輝の間_和室
 一方、社員に対しては、世代による個性の違いへの対応に気を付けています。せっかくうちで働いていただいている社員には、否定するようなことは言わずに接し方を工夫したり、こちらから近づいていくように努力しています。実は、3年くらい経つと旅館業の社員のモチベーションは、一旦下がる傾向にあります。これは、リピーターさんが来るようになり、いろんなことが一通りできるようになってきた頃で、達成感を味わった頃ではないでしょうか。そんな頃に、次の仕事に移ってみようかな、全然違う仕事にも挑戦してみたいなと思う人が出てきてしまうんです。私たちは長く働いてほしいと思うので、「いやいや、まだまだおもてなしって深いんだよ」「もっともっとステップアップできるよ」と伝えて、長く働いておもてなしを追及できるような、ステップアップの制度などを整えていくことが、会社の課題でもあります。

3、社員のスキルアップ~おもてなし英語

 一般企業に勤めていた娘(若女将)の帰郷を機に、会社の課題にひとつひとつ向き合い、取り組んおもてなしイメージでいます。これから、キャリア育成のステップアップ制度やホームページの人材募集欄をリニューアルしていきます。また、2015年は岐阜県に助成いただき、英会話教室を4回開催するなど研修制度を充実させています。社員には無料で「おもてなし英語」の研修を受講してもらいました。海外からのお客様も多い中で、必要に迫られる英語力を身につけることも大事ですが、今年はまず、話せる前の段階の「怖がらない」ことと、さらに「察する力」をつけて、今までのコミュニケーションから一歩前に踏み出そうというテーマでスタートしました。
「おもてなし英語」の講師は、英語の先生ではなく国際通訳士の方です。国際通訳士の方は、普段は海外からのお客様を連れて高山を歩いていらっしゃる方です。いろんな場所を歩かれるのですから、もちろん旅館についても、生の声に直接触れていらっしゃいます。「何かご用ですか?」は「May I help you?」である、というようなことも教えていただきますが、海外の方から見て日本人は笑顔が少ないんだよ、日本人は結構真面目なので考えていると真顔になってしまいがちですよ、ということを教えていただきました。それだけでもみんなの意識がずいぶん変わったと思います。
 海外からのお客様にとっての「日本の旅館の七不思議」みたいなお話は、私たちにとってはとても興味深いものです。しかしそれは逆に、私たちにとっても不思議な話なのです。たとえば、1泊2食という形態は日本ならではのもので、夕食のご案内をすると「頼んでない おもてなし研修 よ」と言われたというお話だったり、また、海外ではご予約人数イコールベッド数という考えですから、大人の人数でご予約いただいたところに、実際は当日お子様がいらっしゃったので「お子様は懐石料理を食べられますか?」とお訊ねすると「無理だよ」と言われて急いでアレンジ料理をご提供したというお話だったりです。他にも、お部屋に着いてお茶をお出ししようとしたら、プライベート空間だからと閉め出されたというお話もあります。海外からのお客様のことをわかるまでには、こちらもずいぶんと時間がかかりましたが、説明の方法をいろいろと話し合い、「日本のサービスを体験しませんか?」と最初にお話することで、徐々にご理解いただけるようになりました。そんな風に文化の違いを学ぶことは、おもてなしをする上でとても大事なことだと思います。

4、社内コミュニケーション~部署間ミーティング

 旅館は24時間営業で、いつも誰かが働いています。現在平野屋の社員は150名ほどで、勤務する時間帯によってはお互いに全く会わない社員同士もいます。たとえば、お昼の洗い物に来る洗い場係は、夜お布団を敷きに来る社員を知りません。その一方で、女将の私は365日営業です。社員の都合と、お客様のご予約とを臨機応変に組み合わせながら、シフトを組んでいきます。そうやって社員とのコミュニケーションをとる中で、相談や時には愚痴などから情報は入りやすい状況であるだけに、すぐに解決することが難しいような問題もよく分かります。やはり顔を合わせないと、要望があっても直接伝えるすべもなく不満が膨らんでいくものですから、年に2回、何回かのコースに分けて部署間ミーティングを開いています。担当としての責任感ゆえに意見や要望がぶつかることもありますが、意見を言うときは、ミーティングをスタートする前に「まずお礼の言葉を言いましょう」と伝えるようにしています。そうすると、なかなか改善できなかった問題が、その日のうちに解決してしまうことも少なくありません。ミーティングの内容は記録をとり、冊子にして情報共有もしています。100%の改善は難しいものの、何かを伝えたいという意欲が活気となり、社内の雰囲気が良くなり、そしてお客様が喜んでくださるという良い流れになったらいいなと思っています。

5、【社員の強み】=【平野屋の強み】~お客様に対して一生懸命

本陣平野屋花兆庵外観 高山では2014年に28万人という数字だったのに対して、2015年11月の時点ですでに35万人のお客様をお迎えしていまして、どこの旅館もてんてこ舞いです。雄大な景色も大きな露天風呂もないこの旅館で、何に喜んでいただくのか、何に魅力を感じてまた来ていただけるのかを社員と話した時に、「料理が美味しくて、温かいおもてなしがある」ような、そんな旅館が浮かびました。
 平野屋の社員は、お客様に対して本当に一生懸命だと思います。何とかこのお客様に喜んでもらいたいと思って働いてくれる社員がたくさんいて、その想いの一つ一つが平野屋の魅力です。朝礼では「あなたは今日一日どうやって働くの?このお客様に対して何をするの?」と聞きます。社員は、ご予約いただいたお客様の情報から、お話のきっかけになるような情報を一生懸命集めてきて、何か接点はないかと探します。そこからお客様と話が弾んで、話題に出たものをいただいたり「おもてなしの心が嬉しかった」とサイトに投稿していただいたりすることもあり、そんなときは本当に嬉しくなります。そんな体験を後輩に伝える、それを聞いた後輩はそうなりたいと頑張る、社員同士でそんな風に繋がる空気があり、良いスパイラルを生み出しています。
 お客様からアンケートでいただいたご意見をとても大切にしています。「ベッドのお部屋があるといい」「段差のないお部屋がいい」など、たとえばこういったご意見も、何年もかけて改善に向け努力しています。中には10年目にしてやっと実現したこともあります。お客様のおっしゃったことやお客様を見て思ったこと感じたことにいつも向き合い参考にして改善することを、これからも積み上げていきたいと思います。
 また、別の視点からの社員力UPのために、多忙なスケジュールの合間を見て、他の旅館の女将女将さんと情報交換をして交流を深めています。業界としての離職率や人手不足という大きな問題がある中、横のつながりでコミュニケーションを図っていくことも大切なことであると考えています。今後はもっと機会を増やしていけたらいいなと思っています。
 こんな風にみんなで一生懸命やってきた努力の結果が、株式会社ジェイティービー様の「最優秀旅館」として評価いただきました。2度目の評価もいただいて、前回を上回るプレッシャーをひしひしと感じていますが、お客様の期待をより大きく感じながら、今もう一度足場を固めて、原点に帰るという事をしています。
 私の趣味はまさに「旅館」です。自分の旅館も好きだし、他の旅館のことも、我を忘れてホームページを穴が開くほど見ています。そのぐらい好きなのです。「旅館」が好き、これが原点なのかもしれませんね。

※情報は掲載当時のものです。